45歳でバイクに目覚めてしまった中年オヤジの、自動二輪合宿免許体験記です。

自動二輪合宿免許体験記 45歳のチャレンジ


 卒業検定を受ける合宿生は、荷物をまとめて合宿管理事務所前に置き、ベッドのシーツと枕カバーをはずして廊下に出しておく。「もう帰ってくるなよ」ということだ。確かに早めに部屋を開けた方が掃除や次の合宿生(10時集合)のためにも良い。

  しかしこれで落ちるとかなり辛そうだ。また荷物と部屋の鍵をを受け取り最低2泊しなければならない。仕方ないとは言え結構きつい。


  覚悟を決めつつ、冷蔵庫の飲み物だけはそのままにして部屋を出る。手のつけてない物はもしかしたら誰か飲んでくれるかもしれないし、ここに戻ったなら私が飲む。私は常に最悪の事態を想定し、その準備をする生活習慣が身に付いているのだ。思えば悲しい人生だ。



  第3教室で卒業検定の説明を受け、教習コースに向かう。雨だ。

  僅かな晴れ間ひとつない、絶好の検定日和だ。

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  検定はAコースで行われた。私はどちらかというとBコースの方が得意だ。本来Aコースを覚えるべき時間に、必死で一本橋の練習をしていて余裕がなかったせいだ。コースを間違えること自体は減点対象にならないので、あまり必死にはならず、しかし「ふ(みきり)、え(す字)、か(べ)…」とつぶやき続ける。万一コースを間違ったことでパニックを起こしてしまっては、出来ることも出来なくなってしまうかもしれない。コースを見つめ「ふ(みきり)、え(す字)、か(べ)…」とぶつぶつ呟く私の姿は、さぞ気味悪かっただろうと思う。

  自動二輪の卒業検定は教習所内で行われる。少なくとも罪のない子どもを轢くようなことはない。


  雨の中自動二輪の検定を受けるのは、大型受験が一人、そして私と同じ普通自動二輪が一人。どちらも私より課題が上手い。この3人の中では私が一番下手なのだ。

  検定の教官は「雨の日は急制動の距離が11メートルから14メートルになりますから余裕があります。天気ばかりはどうにもなりませんし」と、慰めのようなそうでないような事を言う。実際これから採点を行わなければならないのだから、あまり親しげだったり情緒的だったりするような言い方はできないのだろう。ちょっとだけ緊張が伝わる。



  まず大型の試験があり、その次が私の試験だ。


スタート地点に立つ。手を挙げ一礼をする。
乗る前に車体を指さし点検し、スタンドを上げ、ブレーキをかけつつまたがる。
ミラーに触り点検をアピールし、キーをオンにする。
エンジンをかけ、後方確認後発進する。ここから外周1周は減点対象にならない。
再度スタート地点に停車。合図、後方確認、発進。
まずは外周から踏切で一時停止、左右確認。
坂道発進後、交差点に入りS字カーブ。
再度交差点に入り障害物での一時停止、右折し一本橋、クランク。
障害物をよけつつ外周を周り、スラローム、急制動。


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  課題そのものに失敗はなかった。しっかり安全確認もしたつもりだ。あとは自分が気がつかないミスがどの程度あったか、だけだ。



  検定終了後講評を受ける。
大型二輪の受験者は「一本橋が残念でしたね」と言われていた。私は不要な一時停止を指摘された。私は検定官の指摘で頭がいっぱいで、もう一人の自動二輪受験者への講評を聞き逃してしまったが、それほどネガティブな指摘はなかったような気がする。とにかく検定は終わった。あとは約30分後の合否の発表を見るだけだ。



  3人には一種の連帯感が生まれていた。

「3人一緒に合格できると良いですね」
「みんなで合格出来たら、掲示板の前で騒いじゃいましょうか」



  心からそう思う。雑談をしながら発表を待つ。放送のチャイムが鳴るたびに3人でどきどきしている。教習生の中には珍走団候補生のような若者もいたが、この3人は教習所でももっとも真っ当な部類に入る3人だ。良いライダーになると思う。合格させて欲しい。



  チャイムが鳴り、「自動二輪の検定結果を張り出した」との放送が流れる。3人とも小走りに合格発表掲示板に向かう。


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  3名の受験者のうち、1人の番号に赤い線が引かれている。誰かが落ちた。教習番号なので瞬時には判断できない。

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  検定に落ちたのは、私より運転の上手な自動二輪受験者だった。「壁でエンストした」と言っていたのでそのせいかもしれないし、あるいはどこかで安全確認のミスがあったのかもしれない。自動二輪の検定は減点法だ。持ち点100点が70点を割ると不合格となる。細かいミスでもあっという間に5点減点なのだ。エンストがあり、持ち点が厳しかったのかもしれない。私より技術が高い受験者が落ち、下手な私が合格する。やはり試験は水物だ…。


  できれば3人で「やったね!」と騒ぎたかったが、合格者二人だけが校内に入り検定の合格証などを受け取り、この後の説明を聞く。話してくれたのはここの所長さんだった。卒業時の講話は所長さんの仕事なのだろう。繰り返し「安全運転」の大切さについて話す。自分の教習所の卒業生が事故を起こしたり事故にあったりすることは、教習所として一番辛いことなのだろう。



 ともあれ、私は検定に合格した。
信じられないことに、最短時間の教習、再試験もなしでだ。



  400ccのバイクなどロクに乗ったこともなかった私をここまで指導してくれた教官のみなさん、合宿生活を支えてくれた寮長さんや合宿課のみなさん、食堂のおじちゃんやおばちゃん、ありがとう!!


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  中高年が合宿で自動二輪の免許を取ることは、無茶ではない。私が卒業する前日、私より7歳年上の男性が入寮していた。細かな話は、また次回。



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